原則 1〜3 / 9
🌸 傷つけずに伝える3つ
How to correct without wounding
👑 アテナ様の洞察 👑
「最終章ですわ。ここはリーダーの章——指導係、主任、プリセプター。人に何かを直してもらう立場の方に効きます。
PART 1の原則1は「批判するな」でした。では本当に直してほしいことがあるときは、どうするのか。その答えが、この9原則ですのよ。🌸」
◆ PRINCIPLE 1 ◆
まず、ほめる
歯を削る前に、麻酔をする
いきなり注意されると、人は身構えます。身構えた人には、何も入りません。
——だから先にほめて、耳を開ける。順番だけの話ですわ。
ただし、PART 1 原則2の条件つきです。
ほめる部分は本当のことでなければなりません。
ウソでほめると、相手は「あ、これから怒られるな」と察知します。そうなると、ほめ言葉は注意の前ぶれという信号に変わり、逆効果になりますのよ。
幸い、介護の新人さんには必ずほめる材料があります。
早く来る。声が明るい。利用者さんの名前を覚えるのが早い。記録を丁寧に書く。探せば必ず出てきます。
◆ PRINCIPLE 2 ◆
遠まわしに、
注意を与える
「しかし」を「そして」に変えるだけで、全部変わる
原則1でほめました。さあ本題です。ここで多くの人が「しかし」と言ってしまいます。
その瞬間、前半のほめ言葉は全部なかったことになります。
聞いている側は「ああ、さっきのは前置きだったんだ」と理解する。以後、あなたのほめ言葉は信用されなくなりますわ。
🔄 「しかし」を「そして」に
同じ内容を、接続詞ひとつで変えてみます。順に開いてみてくださいませ。
🏥 場面:新人さんが、記録を書くのは丁寧だが、時間がかかりすぎている
しかし
「記録、丁寧に書けてるね。でも時間かかりすぎ。もっと早く書いて」
そして
「記録、丁寧に書けてるね。この丁寧さのままスピードが乗ったら、すごく強い武器になると思う」
💡 なぜ効くか:「でも」はほめを打ち消しますが、「そして」はほめを土台にして次へ伸ばします。
言っている内容(もっと早く)は同じ。なのに前者は否定、後者は期待になる。接続詞ひとつです。
🏥 場面:声かけは優しいが、移乗の姿勢が危なっかしい職員
しかし
「声かけはいいんだけどね。ただ、腰の入れ方が危ないよ」
そして
「声かけがすごく安心感あるよね。あの声かけに腰の使い方が加わったら、この方の移乗、任せられるようになると思う」
💡 なぜ効くか:「危ない」(現在の欠点)ではなく「任せられるようになる」(未来の姿)を語っている。人は、欠点の指摘より未来の姿に動きます。
今週やることが1つだけあるとしたら、これですわ。
ほめた直後の「でも」「ただ」「しかし」を封印する。
そして「そして」「これに〜が加わったら」に置き換える。
——9原則の中で、最も即効性があります。
◆ PRINCIPLE 3 ◆
まず自分の失敗を
話してから、注意する
高いところから言われると、人は聞けない
完璧な人から注意されると、人は縮こまります。
でも「私も同じ失敗をした」と先に言われると、同じ内容がまったく別の意味を持ちますわ。
👆
上から
「ちゃんと確認して」
=あなたは できていない
萎縮する
🤝
横から
「私も1年目、同じことを」
=誰でも通る道
相談できるようになる
介護現場での効果は、想像以上に大きいですわ。
先輩が失敗談を話す職場では、新人が失敗を報告できます。
先輩が完璧を演じる職場では、新人は失敗を隠します。
——どちらの職場が安全かは、言うまでもありませんわね。
ここでPART 1の原則1を思い出してください。批判は報告を止めるのでした。
原則3は、その逆をやっています。自分の弱さを見せることで、報告できる場をつくる。これはリーダーにしかできない仕事ですのよ。
原則 4〜6 / 9
🙋 相手を立てる3つ
Let them keep their dignity
◆ PRINCIPLE 4 ◆
命令をせず、
質問をする
「〜して」ではなく「〜はどう思う?」
命令されたことは、その通りにやります。でもそれ以上のことはやりません。
しかもなぜそうするのかを考えなくなります。
介護現場での言い換え
✕「次、303号室に行って」→ ○「次、どこから回ろうか?」
✕「この方は2人介助でやって」→ ○「この方、1人でやると何が危なそう?」
✕「記録は毎回書いて」→ ○「この記録、書いておくと後で誰が助かると思う?」
質問された人は考えます。考えた人は応用ができます。
命令で育てた人は、教わっていない場面で止まります。介護は例外だらけの仕事ですから、これは致命的ですわ。
例外:緊急時は命令でいいのです。
急変・転倒・誤嚥。この場面で「どうしたらいいと思う?」は危険です。
「〇〇さん、ナースコール押して。私はここを見ます」——明確な指示が正解。
原則4は平時の育成の話。緊急時と平時を混ぜないことが、リーダーの技術ですわ。
🙋 新人指導シミュレーター:手順の抜け
9原則をどう組み合わせるか、実際に選んでみてくださいませ。
🧑⚕️
入職3か月の新人・ミナミさん
ハルさんの移乗で、ブレーキの確認を飛ばしていました。事故には至っていません。
ミナミさんは声かけが丁寧で、利用者さんからの評判はとても良い方です。
今、フロアには他の職員が3人います。
さて、どう伝えますか?
◆ PRINCIPLE 5 ◆
顔を立てる
人前で恥をかかせない。それだけで十分
人前での叱責は、内容がどれだけ正しくても関係ありません。
その人が受け取るのは指摘ではなく、「みんなの前で恥をかかされた」という記憶だけですわ。
介護現場での鉄則
▸ 利用者さんの前で職員を注意しない — 利用者さんが不安になります。「この人に任せて大丈夫かしら」と
▸ ご家族の前では絶対に — 施設全体の信用が落ちます
▸ 申し送りで個人名を挙げて責めない — 「誰が」ではなく「どこで起きやすいか」で共有する
▸ 安全確保はその場で、指摘は後で — この分離ができる人が、良い指導者ですわ
逆に、ほめるのは人前で。
注意は個別に、称賛は公開で。——これだけ覚えて帰っていただければ十分ですのよ。
◆ PRINCIPLE 6 ◆
わずかなことでも、
惜しみなくほめる
できてから ほめるのでは、遅い
私たちはつい、できるようになってからほめようとします。
でもそれでは、できるようになる前に辞めてしまうのですわ。
ほめる単位を、うんと小さくする
✕「一人で移乗できるようになったらほめる」(3か月先)
○「今の声かけ、いいね」(今日)
○「ブレーキ、無意識にかけてたね」(今日)
○「その角度、やりやすそう」(今日)
介護は成果が見えにくい仕事です。だから過程を刻んでほめるしかありません。
🌿 利用者さんにも、同じことが言えます
リハビリで「歩けるようになったらほめる」では、その日は永遠に来ないかもしれません。
「今日、手すりを持つ手の位置が良かったですね」——今日ほめられることを見つける。
できることが減っていく日々のなかで、今日の小さな一歩を見つけてくれる人の存在は、想像以上に大きいのですわ。
原則 7〜9 / 9
🌱 人を育てる3つ
Grow them
◆ PRINCIPLE 7 ◆
期待をかける
人は、扱われたとおりの人間になっていく
カーネギーは、相手に「良い評判」を与えると、人はそれを守ろうとすると書きました。
——そして、これは悪い方向にも同じように働きます。
🔁 レッテルが現実になっていく5段階
「あの新人、ちょっと使えないよね」——この一言が、どう現実になっていくか。番号を押して進めてくださいませ。
休憩室で「あの子、ちょっと使えないよね」と誰かがこぼす。この時点では、たまたま失敗を2回見ただけかもしれません。
だから、逆をやるのです。
「ミナミさんは丁寧な人だから、この方をお願いしたい」
「◯◯さんは気づくのが早いから、変化があったら教えてほしい」
——先に評判を渡す。人は渡された評判を守ろうとします。
利用者さんにも同じです。
「あの人は拒否が強いから」というレッテルは、職員の関わり方を硬くし、その硬さがさらに拒否を生みます。
レッテルは、貼った人の関わり方を変えることで現実になるのですわ。
◆ PRINCIPLE 8 ◆
激励して、
能力に自信を持たせる
「君なら簡単だ」と思わせる
指導するとき、私たちはつい仕事の難しさを強調してしまいます。
「介護はそんな甘くない」「これができないと一人前じゃない」——本人のためを思って言っているのに、相手のやる気を折っています。
⛰️
難しさを強調
「これは何年もかかる」
「センスがないと無理」
手をつける前に諦める
🪜
易しさを強調
「コツは1つだけ」
「あとは慣れるだけ」
やってみようと思える
言い換えの型
✕「移乗は奥が深いから、簡単には身につかないよ」
○「足の位置だけ覚えれば、あとは体が勝手に覚えるよ。もうほとんどできてる」
——嘘をつく必要はありません。「本当にできそうな最小の一歩」を切り出して見せるだけですわ。
介護の離職は、多くが最初の数か月に集中します。
その時期にいるのは、能力がない人ではなく「自分には向いていないかも」と思ってしまった人。
原則8は、離職を止める原則でもありますのよ。
◆ PRINCIPLE 9 ◆
喜んで協力させる
30原則の到達点
最後の原則は、30個すべての到達点ですわ。
同じことをやってもらうにも、「やらされた」と「やりたい」では、結果がまるで違う。
「やりたい」に変える4つの材料
① 意味を伝える —「この記録が、次の担当者を助けます」
② その人の得を示す —「この技術、腰痛の予防にもなりますよ」(PART 1 原則3)
③ 選ばせる —「AとB、どちらでやってみたい?」
④ 名指しで頼む —「◯◯さんにお願いしたいんです」(原則7)
お気づきでしょうか。原則9は新しい技術ではありません。
ここまでの29原則を組み合わせたものです。だから最後に置かれているのですわ。
👑 アテナ様より 👑
「30原則、これで全部ですわ。
最後にひとつだけ。この本のタイトルは『人を動かす』ですけれど、読み終えてみると、動かされているのは自分のほうだと気づきませんか。
批判をやめるのも、認めるのも、聞くのも、待つのも——全部こちらが変わる話でしたのよ。それでいいのです。変えられるのは、いつだって自分の側だけですから。😌」
PART 4 まとめ
🏆 九原則を現場に持ち帰る
Take it back to the floor
👑 人を変える九原則 👑
①まずほめる — 耳を開けてから中身を入れる。ただし本当のことだけ。
②遠まわしに注意する — 「でも」を封印し「そして」に。9原則で最も即効性がある。
③まず自分の失敗を話す — 先輩が失敗を話す職場では、新人が失敗を報告できる。
④命令せず、質問する — 考えた人だけが応用できる。ただし緊急時は明確な指示を。
⑤顔を立てる — 注意は個別に、称賛は公開で。
⑥わずかなことでもほめる — 完成を待たない。ほめる単位を小さく刻む。
⑦期待をかける — レッテルは現実になる。だから先に良い評判を渡す。
⑧激励して自信を持たせる — 難しさを強調しない。最小の一歩を切り出す。離職を止める原則。
⑨喜んで協力させる — 意味・その人の得・選択・名指し。29原則の組み合わせ。
30原則を1行にすると、こうなります。
——物事を、相手の側から見る。
PART 1で土台をつくり、PART 2で好かれ、PART 3で納得してもらい、PART 4で変わっていただく。
4つの章は階段でしたが、どの段にも同じことが書いてありましたのよ。
✅ 今週、現場で試す
最終章です。ひとつ試すごとに、30原則トップの進捗が満ちていきますわ。
🏆 30原則トップで、進捗を確認する
4つのPARTすべて、お疲れさまでした