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BPSDを知る・理解する

認知症の行動・心理症状 — その正体から対応まで

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女神アテナ
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BPSDとは何か?

💡 たとえで理解する

BPSDは「困った行動」ではなく、「言葉にできないSOSサイン」です。

子どもが泣くのと同じです。泣いている子どもに「うるさい!」と怒っても解決しません。「お腹が減った?」「どこか痛い?」と原因を探ることが大切です。

👶

赤ちゃんは言葉で「お腹が空いた」と言えないから泣く。
認知症の方も言葉で伝えられない代わりに、徘徊・暴言・不安として表現する。

中核症状とBPSD

🧠 中核症状

脳の神経細胞が失われることで必ず現れる、認知症の「本体」にあたる症状。薬や環境では防ぎにくい。

記憶障害 / 見当識障害 / 判断力低下 / 言語障害

💬 BPSD(周辺症状)

本人の性格・環境・体調・心理状態が絡み合って生じる。適切なケアで改善の可能性があるのが最大の特徴。

徘徊 / 暴言・暴力 / 妄想 / 抑うつ / 幻視

📌 中核症状は「脳のハードウェア故障」、BPSDは「そこから生まれた苦しみが外に出たもの」。
ハードウェアは直せなくても、苦しみは和らげることができます。

行動面の症状

🚶 徘徊

「目的もなくさまよっている」ように見えるが、本人には明確な目的がある

「家に帰らなきゃ」「仕事に遅れる」

😤 暴言・暴力

混乱・恐怖から「自分を守るため」に攻撃的になる。悪意ではなく防衛反応

「触るな!」「ここから出せ!」

🚿 不潔行為・弄便

排泄物の処理方法がわからなくなる。清潔・不潔の感覚が失われている状態。

🍴 異食

食べられないものを口に入れてしまう。「食べ物かどうか」の判断が難しくなる。

心理面の症状

😔 抑うつ・アパシー(無気力)

抑うつは悲しみ・絶望感、アパシーは感情が平板化して何にも反応しなくなる状態。似ているが別物

👁 幻視・幻聴

実際にはないものが見える・聞こえる。レビー小体型認知症に特に多い

「あそこに知らない人がいる」「虫が這っている」

😰 不安・焦燥

理由のわからない不安感・そわそわ感。「今どこにいるのかわからない」恐怖から。

🔍 妄想

現実と異なる確信。記憶障害で「置いた場所を忘れる」ことが原因で起きやすい。

なぜBPSDは起きるのか?

BPSD — 3つの要因が重なって起きる

🩺

身体的要因

痛み・空腹・脱水
便秘・尿路感染
薬の副作用・睡眠不足

💭

心理的要因

自尊心の傷つき
孤独感・疎外感
過去のトラウマ

🏠

環境的要因

温度・照明・騒音
急な引っ越し・入院
介護者のストレス

BPSDは「言葉にできないSOS」

🆘 行動の裏にあるもの

「お腹が痛い」「ここがどこか分からなくて怖い」「誰も気にかけてくれない」——

これらを言葉で伝えられない代わりに、叫んだり、歩き回ったり、暴れたりして表現しているのです。

💡 たとえるなら:音が出なくなったアラームのようなもの。
原因を取り除かなければ、止まりません。

ケアの3つの基本原則

1

否定しない

本人の世界では財布は本当に盗まれている。「そんなはずない」と否定するとBPSDが悪化する。

2

驚かせない
急がせない

視線を合わせ、ゆっくり正面から近づく。それだけで反応が変わる。

3

役割・居場所
をつくる

「頼りにされている」と感じると落ち着く。軽い作業の手伝いが効果的。

声かけの実践例

🔍 物取られ妄想への対応

ご本人:「財布を誰かに盗まれた!あなたが持っていったんでしょう!」

介護者:「大切な財布がなくて、それは心配ですよね。一緒に探しましょう。」

→ 否定も肯定もせず、共感から入るのがポイント。

⚔ バトルシミュレーションで体験する →

🚶 徘徊への対応

「どこかに行くんですか?私も一緒に行っていいですか?」
安全を確認しながらしばらく一緒に歩く。

👁 幻視への対応

「驚きましたね。怖かったですか?今は大丈夫ですよ。」
NG:「そんな人はいません!」

ユマニチュード(Humanitude)

フランス発のケア技法

「人間らしさを取り戻す」という意味を持つ。4つの柱を基本としたケアの哲学。

👀 見つめる

同じ高さで目を合わせ、「あなたを大切にしている」と伝える

💬 話しかける

今やっていることを言葉で伝えながらケアする

🤝 触れる

広い面積で、ゆっくり優しく触れる(つかむのではなく包む)

🧍 立つ

立つ能力を維持することで自尊心と身体機能を守る

薬による治療が必要な場合

💊 抗精神病薬(慎重使用)

激しい興奮・暴力・妄想が非薬物療法で改善しない場合に使用。あくまで「最後の手段」

⚠️ 脳卒中リスク・転倒・過鎮静のリスクあり。最小量・短期間で。

🌿 抑肝散(ヨクカンサン)

日本老年医学会のガイドラインでも推奨。興奮・攻撃性・不安・不眠に比較的副作用が少ない

✅ 低カリウム血症に注意。定期的な血液検査が推奨。

介護者が燃え尽きないために

🏷

「病気が言わせている」と割り切る

暴言を言っているのは「病気」。本人の性格が変わったのではない。

🤝

プロを頼る

ケアマネジャー・主治医に相談。デイサービスやショートステイで介護から離れる時間を。

🔄

完璧を求めない

介護に100点はない。今日も向き合っていること自体が十分。

まとめ

BPSDの理解が、ケアの第一歩です

BPSDは決して「困った行動」ではなく、
本人が「困っているサイン」です。

そう捉えるだけで、少しだけ視界が開けるかもしれません。

理解

SOSサインとして捉える

実践

否定せず共感から入る

継続

介護者自身も大切にする

女神アテナ

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