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身体拘束廃止・防止の意義

第1章 — 本人の尊厳を保持した生活を支えるケアを目指して

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女神アテナ
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尊厳を保持したケアの4つの柱

たとえ認知症等により介護が必要となり、自分の意思を十分に表明できない状態であっても、本人の自立したその人らしい生活を支えるケアを確立することが重要です。

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共通認識を持つ

施設・事業所だけでなく、家族や関係者・関係機関の間で「尊厳の保持」について共通認識を持つ

👂

本人の声を聴く

声なき声をしっかりと聞き、本人の望む生活や気持ちを理解することが第一歩

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決めつけない

「認知症だから」「要介護だから」と勝手に決めつけず、できることや可能性に着目する

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権利を護る

すべての人の生命・権利が護られ、誇りを持った一人の人間として暮らし続けられるよう支援

「尊厳の保持」が法に位置づけられた経緯

📜 日本国憲法 第13条

「すべて国民は、個人として尊重される」— すべての人間には侵すことのできない価値が等しくある

📋 平成12年 社会福祉法改正

福祉サービスの基本的理念として「個人の尊厳の保持」を規定(第3条)

📋 平成17年 介護保険法改正

高齢者が「尊厳を保持すること」を目的規定(第1条)に追加

📋 令和6年 認知症基本法施行

「認知症の人が尊厳を保持しつつ希望を持って暮らすこと」を目的として明記(第1条)

身体拘束とは

「本人の行動の自由を制限すること」

身体拘束は、本人の行動を当人以外の者が制限することであり、当然してはならないことです。緊急やむを得ない場合であっても、非常に強い権限を行使する重みを理解し、適正な手続きを極めて慎重に行う必要があります。

判断のポイント

身体拘束に該当するかどうかのポイントは「本人の行動の自由を制限しているかどうか」です。本人に向き合い、アセスメントを十分に行い、組織および本人・関係者等で協議し、定期的に見直し改善していくことが大切です。

身体拘束に該当する具体的な行為

①②④⑨ 縛る

車いす・ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る、チューブ抜去防止の拘束

③ 囲む

自分で降りられないよう、ベッドを柵(サイドレール)で囲む

⑤ 機能制限

ミトン型手袋等で手指の機能を制限する

⑥⑦ 器具の使用

Y字型拘束帯・腰ベルト・車いすテーブル、立ち上がりを防げるいす

⑧ 介護衣

脱衣やオムツはずし制限のためつなぎ服を着せる

⑩ 薬物

行動を落ち着かせるため向精神薬を過剰に服用させる

⑪ 隔離

自分の意思で開けられない居室等に隔離する

⚠️ 「緊急やむを得ない場合」の適正な手続きを経ていない身体的拘束等は、原則として高齢者虐待に該当する行為とされ、自治体への相談・通報が必要です。

身体拘束がもたらす弊害 — 身体的弊害

🦴 外的弊害

関節拘縮、筋力低下、四肢の廃用症候群、圧迫部位の褥瘡の発生

💊 内的弊害

食欲の低下、心肺機能や感染症への抵抗力の低下

⚠️ 大事故の危険

拘束から逃れようとして転倒・転落事故、窒息等の大事故を発生させる危険性がある

精神的弊害・社会的弊害

💔 精神的弊害

本人は縛られる理由もわからず、人間としての尊厳を侵害される。不安、怒り、屈辱、あきらめ等の精神的苦痛。認知症の進行やせん妄の頻発。拘束されている姿を見た家族に与える精神的苦痛、罪悪感や後悔。

🏢 社会的弊害

看護・介護職員自身の士気の低下。施設・事業所に対する社会的な不信、偏見。心身機能の低下によるQOL低下だけでなく、更なる医療的処置を生じさせ経済的にも影響を及ぼす。

拘束が拘束を生む「悪循環」

最初は「一時的」として始めた拘束が「常時」の拘束となり、場合によっては高齢者の死期を早める結果にもつながりかねません。

① 安易な拘束

十分な検討なく身体拘束を実施

② 精神的苦痛

不安・怒り・屈辱

BPSD増悪

認知症進行、行動・心理症状

④ 機能低下

筋力低下・関節拘縮

⑤ リスク増大

転倒・転落の重大事故

⑥ 更なる拘束

悪循環が繰り返される

🔄 この悪循環を「よい循環」に変えることが廃止の本質

身体拘束ゼロに向けて

誤解:安全確保のために必要

身体拘束による事故防止効果は必ずしも明らかでなく、逆に事故の危険性が高まることが報告されています。転倒を「防止」ではなく、転倒すらできない状態に追い込むだけです。

誤解:人手不足だから不可能

現行の体制で身体拘束を廃止している施設は実在します。大切なのはどのような介護をめざすかを明確にすること。

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原因の分析と未然防止

転倒・転落の原因を分析し、適度な運動で生活リズムを改善するなど未然に防止する

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事故を防止する環境づくり

手すり設置、足元の整理、車椅子の調整、ベッドの高さ調整等の工夫

第1章 まとめ

尊厳の保持

すべての人の権利が護られ、その人らしい生活を続けるために、関係者全員で共通認識を持つ

身体拘束の定義

本人の行動の自由を制限すること。11の具体例があり、行為の形態は多岐にわたる

3つの弊害

身体的弊害、精神的弊害、社会的弊害。拘束は悪循環を生み、更なる拘束につながる

ゼロへの道

原因分析・未然防止と環境づくり。安全確保や人手不足を理由にした拘束は誤解に基づく

女神アテナ

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