← 国試の間(4巻)に戻る
発達と老化の理解Ⅱ・第1章 Lesson 3(後半)
09

発達課題
ハヴィガースト・ペックとライフサイクル

各年代の「宿題」と、人生のしめくくり

各段階で達成すべき発達課題——ハヴィガーストの課題、ペックの老年期3課題、そして乳児期から老年期までのライフサイクル各期の課題を国試の形に整理。

年代ごとに乗りこえる課題があり、老年期には特有の宿題がある。サクセスフル・エイジングまでまとめます。

アテナ様の導き

各発達段階で達成が求められる課題を発達課題といいます。これを最初に提唱したのはハヴィガースト。彼は人生を6段階に分け、各段階の課題を達成すれば次の段階も容易になるとしました。さらにペックは、エリクソンの老年期の課題「自我の統合 vs 絶望」をより細かく3つに分けています。老年期は失うものが多い時期ですが、それでも役割を見出し、身体の不調を超え、死を見すえてなお価値を残そうとする——その姿こそ「成功した老い(サクセスフル・エイジング)」。介護はその達成を支える仕事ですわ。

アテナ様の導き(本音モード)

覚える順番:「発達課題を最初に言ったのはハヴィガースト」。これは頻出。ペックは老年期を3つに割った人(仕事・体・死)。そしてライフサイクルは、エリクソンの課題とセットで「成人期=親密性/壮年期=次世代に渡す(生殖性)/老年期=統合」を結びつける。最後のサクセスフル・エイジング=うまく歳をとるは介護の理念そのもの。ここは点も取れて、現場でも効く章です。

1枚でつかむ:発達課題の3人+理念
誰が何をしたか、を最初に固める

📚 ハヴィガースト

発達課題の概念を最初に提唱。人生を6段階に分け、各段階で7〜8項目の課題を設定。達成すると次が容易、失敗すると次も困難。

🧓 ペック

エリクソンの老年期課題「自我の統合 vs 絶望」を3つに細分化(自我分化・身体超越・自我超越)。

🎯 エリクソン(再掲)

成人期=親密性、壮年期=生殖性、老年期=自我の統合。前ページの8段階と接続。

🌅 サクセスフル・エイジング

下降していく時期だからこそ、老年期を豊かな実りの時期として捉える理念。

1. ハヴィガーストの発達課題
発達課題の概念を最初に提唱

アメリカの教育心理学者 R.J. ハヴィガーストは、発達課題という概念を最初に提唱しました。人間の一生を6つの段階(乳幼児期・児童期・青年期・壮年初期・中年期・老年期)に分け、各段階で達成すべき課題を7〜8項目設定。課題を達成すると次の段階を容易に達成でき、失敗すると不幸になり次の課題達成も困難になるとしました。

発達段階発達課題(例)
乳幼児期歩行/固形食物の摂取/話すこと/排泄習慣/善悪の区別と良心の発達 など
児童期遊びに必要な身体技能/読み・書き・計算の基礎的技能/友だちとの良好な関係/良心・道徳性・価値の発達 など
青年期身体構造と性的役割の理解/親や大人からの情緒的独立/経済的独立への自信/就業への準備/結婚と家庭生活の準備 など
壮年初期配偶者の選択/配偶者との生活/子どもをもつこと/育児/家庭管理/就職/市民としての責任 など
中年期社会的責任/生活の維持/子どもの幸福の支援/余暇の充実/配偶者との結びつき/生理的変化への適応 など
老年期身体的衰えへの適応/収入減への適応/配偶者の死への適応/親密な人間関係/社会的役割の受容 など
2. ペックの老年期における発達課題
「自我の統合 vs 絶望」を3つに分ける

R. ペックは、エリクソンの老年期の課題「自我の統合 vs 絶望」を、さらに3つの課題に分け、それぞれの心理的課題と直面する危機を示しました。危機に適切に対応できれば、老年期にも自我を発達させられるとしています。

課題(達成した状態)内容(危機 ⇔ 達成)
自我分化
(⇔ 仕事役割没入)
仕事や社会的役割を終えたとき、その役割で得た価値観にとらわれ喪失感を抱くのが「仕事役割没入」。異なる価値観を見出し新たな生活・人間関係を築けるのが「自我分化」。
身体超越
(⇔ 身体没入)
身体の不調にこだわって不満足感を抱くのが「身体没入」。不調や疾病があっても人間関係や趣味を通して幸福感を得られるのが「身体超越」。
自我超越
(⇔ 自我没入)
「死」にこだわって現在の生活を無意味と感じるのが「自我没入」。死を予期しながらも役割を果たし、自分の人生を超えた価値を残そうとするのが「自我超越」。

ペックは「仕事・体・死」の3つで老年期を整理した人。仕事を失っても新しい自分(自我分化)、体が弱っても楽しみで超える(身体超越)、死を前にしても価値を残す(自我超越)。「没入=とらわれてダメな方/超越・分化=乗りこえた良い方」と覚えると迷いません。

3. ライフサイクル各期の発達
乳児期〜老年期の「こころの課題」
時期発達の中身(エリクソンの課題と対応)
乳児期泣く行為に養育者が適切に応えることで基本的信頼を体験。欠如すると不信感へ。
幼児期言語の発達で意思・欲求を伝えられる自我の芽生え。しつけを通して社会性を学ぶ。
児童期・学童期規範・ルールに従い行動。課題をこなす自信と、何かに熱中してやり遂げる勤勉性が身につく。
思春期・青年期自分が何者かを知りアイデンティティ(自己同一性)を確立。確立できないとアイデンティティの拡散。社会的責任の猶予期間=モラトリアム
成人期就職し社会に価値を生む。他者との親密性を獲得し、次世代へ継承・貢献する(伝えないと停滞性)。
老年期人生を振り返り満足できれば自我の統合。否定的だと死への絶望に。サクセスフル・エイジングの視点が大切。
WORD:モラトリアム / サクセスフル・エイジング
国試で問われる用語

モラトリアム:青年期に与えられる、大人になるまでの社会的責任が猶予される期間。この間に自己の生きがいを探す。確立を引き延ばす状態を「モラトリアム人間」とも。サクセスフル・エイジング:体力的・認知的に下降していく老年期を、豊かな実りを感じられる幸福な時期として捉えようとする考え方。

試験に出るところ
本音でまとめる
理解度チェック
押すと答えが出ます

Q1. 発達課題に関する記述として、最も適切なのはどれ?

正解はA。発達課題の概念を最初に提唱したのはハヴィガーストです。彼は一生を6段階に分け、各段階の課題達成が次の段階の達成を左右するとしました。

Q2. ペックの老年期における発達課題に関する記述で、適切なものはどれ?

正解はB。ペックは老年期の「自我の統合 vs 絶望」を3課題に細分化しました。身体超越は不調があっても幸福を得られる状態で、仕事役割没入は役割の喪失感にとらわれた危機の状態です。

Q3. ライフサイクルと発達課題の組み合わせで、適切なものはどれ?

正解はB。青年期はアイデンティティ(自己同一性)の確立が課題で、確立できないとアイデンティティの拡散に陥ります。児童期の課題は勤勉性、成人期が親密性、老年期は自我の統合です。
← 前へ発達と老化⑨次へ →