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認知症の理解Ⅰ・第2章 Lesson 3
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認知症の中核症状

中核症状——脳の働きが直接こわれて出る5つの症状

脳の器質的な変化で必ず現れる中核症状=記憶障害・見当識障害・実行機能障害・失行・失認・失語。それぞれの違いを事例とともに国試の形に整理。

中核症状は「脳がこわれて直接出る症状」。記憶・見当識・段取り(実行機能)・失行・失認の5つを、具体例で見分けられるようにします。

アテナ様の導き

中核症状は、脳の器質的な変化によって起こる認知機能の障害で、認知症になると(程度の差はあれ)必ず現れます。代表は記憶障害・見当識障害・実行機能障害・失行・失認・失語。とくに記憶障害は、ふつうの物忘れ(生理的健忘)と違って体験そのもの(エピソード記憶)が抜け落ち、忘れた自覚もないのが特徴です。一方で直近のことは覚えられなくても、昔の記憶は保たれていることも珍しくありません。次のページのBPSD(行動・心理症状)と混同しないよう、まずは「脳が直接こわれて出る症状=中核症状」をしっかり区別しましょう。

アテナ様の導き(本音モード)

キモは「中核症状=脳の故障で直接出る/BPSD=環境や関わりで出る(次ページ)」の区別。中核症状の記憶障害は「体験ごと忘れる・忘れたことも気づかない・でも昔のことは覚えてる」。あとは見当識=今いつ・どこ・誰がわからない/実行機能=段取りができない(料理が作れない)/失行=体は動くのに動作ができない/失認=目耳は正常なのに認識できない(顔がわからない=相貌失認)。この5つを例で覚えればOK。

1枚でつかむ:中核症状 5つの柱
「一言キーワード」で見分ける

記憶障害

体験ごと忘れる。直近×/昔○。忘れた自覚もない。

見当識障害

今がいつ・どこ・誰かわからない。

実行機能障害

段取りができない(料理が作れない)。

失行

体は動くのに意図した動作ができない

失認

目・耳は正常なのに認識できない(顔=相貌失認)。

失語

言葉を話す・理解する力の障害。

1. 記憶障害
物忘れとは「質」が違う

認知症の記憶障害は、加齢による生理的健忘(物忘れ)とは異なります。物忘れは「体験の一部」を忘れヒントで思い出せますが、認知症は体験したこと(エピソード記憶)まるごとが失われ、忘れている自覚もないのが特徴。一方、直近のことは覚えられなくても、過去の出来事は鮮明に話せることがよくあります(直近の記憶ほど障害されやすい)。

事例:週3回デイサービスを利用するAさん(89歳)は、毎回「初めて来ました」と不安そうに挨拶する。昨日も利用したのに、今日も初めての場所と感じている。→ 昨日の体験そのものの記憶が残っていない(エピソード記憶の障害)。

2. 見当識障害
時・場所・人がわからなくなる

見当識とは、自分が置かれている状況(年月日・時間・季節・場所・人物など)を正しく認識する能力。障害されると、今日が何月何日か・今が何時か・自分がどこにいるか・誰と話しているかが正確にわからなくなります。一般に時間→場所→人物の順で障害が進むとされます。

事例:特養に入居して1年のBさん(75歳)は、2時間に1回「ここはどこ?」「今日は何日?」と尋ねる。自分の居室がわからず他人の部屋に入ってしまう。

3. 実行機能障害
段取りが立てられない

実行機能とは、目的を果たすためにいくつかの作業を統合し、順序立てておこなう能力。障害されると、いくつもの動作で構成される事柄(料理・掃除など)の段取りができなくなります。例:味噌汁を作るのに出汁をとらずに味噌を直接入れる/わかめを切らずに鍋に入れるなど、作業や順番がわからなくなる。

4. 失行
体は動くのに、動作ができない

失行とは、運動機能の障害はなく手足は問題なく動かせるのに、意図した動作ができないこと。例:歯ブラシを持つことはできても、適切に使えず頭のほうへ持っていってしまう(観念失行)。

観念失行

  • 物が何かはわかるが使い方が適切にできない(歯ブラシをうまく使えない)

観念運動失行

  • 習慣的動作を「やってみせて」と言われるとできない(金槌で打つまね等)

構成失行

  • 図形を見て模写できない

着衣失行

  • 服を正しく着られない(上着の上に下着など順番が乱れる)

肢節運動失行

  • ボタンかけ・ページめくりなど細かい手の動作が困難
5. 失認
感覚は正常なのに、認識できない

失認とは、視覚や聴覚などの感覚器は正常であるにもかかわらず、対象を認識できないこと。例:娘の顔を見ても「どちら様ですか?」と誰かわからない(相貌失認)。

相貌失認

顔を見ても誰かわからない(家族・友人の顔が認識できない)。

視覚失認

見えてはいるがそれが何かわからない

聴覚失認

聞こえてはいるが音の意味がわからない(電話のベルを電話と認識できない)。

WORD:エピソード記憶 / 見当識 / 失行・失認
国試で問われる用語

エピソード記憶:いつ・どこで・何をしたという体験の記憶。認知症ではこれが障害され、体験ごと忘れる。見当識:今の時・場所・人物など自分の状況を正しく認識する力(時間→場所→人物の順で障害されやすい)。失行:運動機能は正常なのに意図した動作ができない。失認:感覚器は正常なのに対象を認識できない(顔=相貌失認)。

試験に出るところ
本音でまとめる
理解度チェック
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Q1. 認知症の記憶障害に関する記述で、適切なものはどれ?

正解はB。認知症の記憶障害は生理的健忘と異なり、体験そのもの(エピソード記憶)が失われ、忘れた自覚もないのが特徴です。直近の記憶ほど障害されやすく、過去の記憶は保たれやすい(CはBと逆)。

Q2. 中核症状の組み合わせで、適切なものはどれ?

正解はB。実行機能障害は段取り(順序立て)ができなくなる症状。Aは「失認」の説明、Cは「失行」の説明で、用語が入れ替わっています。失行=動作ができない、失認=認識できない。

Q3. 家族の顔を見ても誰かわからない症状を何という?

正解はA。相貌失認は、視覚は保たれているのに家族や友人の顔を見ても誰かわからない失認の一種。観念失行は物の使い方ができない、構成失行は図形の模写ができない症状です。
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