脳の器質的な変化で必ず現れる中核症状=記憶障害・見当識障害・実行機能障害・失行・失認・失語。それぞれの違いを事例とともに国試の形に整理。
中核症状は「脳がこわれて直接出る症状」。記憶・見当識・段取り(実行機能)・失行・失認の5つを、具体例で見分けられるようにします。
中核症状は、脳の器質的な変化によって起こる認知機能の障害で、認知症になると(程度の差はあれ)必ず現れます。代表は記憶障害・見当識障害・実行機能障害・失行・失認・失語。とくに記憶障害は、ふつうの物忘れ(生理的健忘)と違って体験そのもの(エピソード記憶)が抜け落ち、忘れた自覚もないのが特徴です。一方で直近のことは覚えられなくても、昔の記憶は保たれていることも珍しくありません。次のページのBPSD(行動・心理症状)と混同しないよう、まずは「脳が直接こわれて出る症状=中核症状」をしっかり区別しましょう。
キモは「中核症状=脳の故障で直接出る/BPSD=環境や関わりで出る(次ページ)」の区別。中核症状の記憶障害は「体験ごと忘れる・忘れたことも気づかない・でも昔のことは覚えてる」。あとは見当識=今いつ・どこ・誰がわからない/実行機能=段取りができない(料理が作れない)/失行=体は動くのに動作ができない/失認=目耳は正常なのに認識できない(顔がわからない=相貌失認)。この5つを例で覚えればOK。
体験ごと忘れる。直近×/昔○。忘れた自覚もない。
今がいつ・どこ・誰かわからない。
段取りができない(料理が作れない)。
体は動くのに意図した動作ができない。
目・耳は正常なのに認識できない(顔=相貌失認)。
言葉を話す・理解する力の障害。
認知症の記憶障害は、加齢による生理的健忘(物忘れ)とは異なります。物忘れは「体験の一部」を忘れヒントで思い出せますが、認知症は体験したこと(エピソード記憶)まるごとが失われ、忘れている自覚もないのが特徴。一方、直近のことは覚えられなくても、過去の出来事は鮮明に話せることがよくあります(直近の記憶ほど障害されやすい)。
事例:週3回デイサービスを利用するAさん(89歳)は、毎回「初めて来ました」と不安そうに挨拶する。昨日も利用したのに、今日も初めての場所と感じている。→ 昨日の体験そのものの記憶が残っていない(エピソード記憶の障害)。
見当識とは、自分が置かれている状況(年月日・時間・季節・場所・人物など)を正しく認識する能力。障害されると、今日が何月何日か・今が何時か・自分がどこにいるか・誰と話しているかが正確にわからなくなります。一般に時間→場所→人物の順で障害が進むとされます。
事例:特養に入居して1年のBさん(75歳)は、2時間に1回「ここはどこ?」「今日は何日?」と尋ねる。自分の居室がわからず他人の部屋に入ってしまう。
実行機能とは、目的を果たすためにいくつかの作業を統合し、順序立てておこなう能力。障害されると、いくつもの動作で構成される事柄(料理・掃除など)の段取りができなくなります。例:味噌汁を作るのに出汁をとらずに味噌を直接入れる/わかめを切らずに鍋に入れるなど、作業や順番がわからなくなる。
失行とは、運動機能の障害はなく手足は問題なく動かせるのに、意図した動作ができないこと。例:歯ブラシを持つことはできても、適切に使えず頭のほうへ持っていってしまう(観念失行)。
失認とは、視覚や聴覚などの感覚器は正常であるにもかかわらず、対象を認識できないこと。例:娘の顔を見ても「どちら様ですか?」と誰かわからない(相貌失認)。
顔を見ても誰かわからない(家族・友人の顔が認識できない)。
見えてはいるがそれが何かわからない。
聞こえてはいるが音の意味がわからない(電話のベルを電話と認識できない)。
エピソード記憶:いつ・どこで・何をしたという体験の記憶。認知症ではこれが障害され、体験ごと忘れる。見当識:今の時・場所・人物など自分の状況を正しく認識する力(時間→場所→人物の順で障害されやすい)。失行:運動機能は正常なのに意図した動作ができない。失認:感覚器は正常なのに対象を認識できない(顔=相貌失認)。
Q1. 認知症の記憶障害に関する記述で、適切なものはどれ?
Q2. 中核症状の組み合わせで、適切なものはどれ?
Q3. 家族の顔を見ても誰かわからない症状を何という?